日常
冷えたドアノブを捻る音に続いて
誰もいない部屋にただいまの声が響く
君の置いていった化粧品とか
たわいもない売れ行きの悪い陳列棚みたいな
洗面台で冷たい水に手を濡らす
既に冷えきってて冷たさを感じないけど
湿ったタオルは仄かに温もりを感じた
絨毯とは思えない冷たさに腰を下ろして
仕方なく買ったサラダを摘みながら
今日はビールでも飲みたかったけど
たまにはC1000を飲んでみる非日常
別になんの代わり映えもしないけど
健康志向なんて今更遅いっていうか
今日会社で企画が一次通ったからって
ちょっとだけ舞い上がってた
でも結局あのハゲ課長のせいで
どうせ内容捻じ曲げられることなんて
今になれば簡単に分かることなんだけど
10分前の自分をちょっと恨んでみたりする
テレビを付けても笑えないし
隣の部屋のやつに煩いって怒られるし
深夜お前らの営みのが煩わしいってのが
わかんねえのかなんて
言えるわけもないけど
君の昔の写真でも見ながら
C1000飲んでる自分が恥ずかしくなる時間帯
そいえば部屋の鍵返して貰ってないな
なんてどうでもいいこと考えながら
期待とかじゃないけど
この感覚がなんか
懐かしかったりもする
君が出てってから3ヶ月
なんとかそれなりにやっていけてるよ
君が推してたあの不細工な俳優も
まだ元気にやってるよなんて
田舎に帰った君に伝えることは
別に何も無いけどね
寒さを感じなくなった手足に
追い打ちをかけるかのような痺れ
馬鹿みたいに正座なんてしなければ
一人暮らし始めた中学生の頃みたいに
何も変わらない感情の揺らぎが苦しめる
さて、明日も早いし
風呂入って寝るか
生乾きのダサいTシャツ抱えて
風呂場にふらふら歩く
ギシギシ床の音が響く
除夜の鐘に負けじと響く
たった1人のハッピーニューイヤー