美人局
改札を出た時ふと見上げた
透き通った空はまるで
昨日のことを全て虚構とするように
無慈悲な寒さに心を奪われた
インフルエンザにくぐもる白い面が
人の形をしている
そんな奇妙な感覚すら懐かしく思えた
時計の針の指す方角に朝は来ないけど
それでも朝を待つ自らを
自ずと責めるしかなかった
吐気も治まり白面とも目線が合う
痛みも引いてきて
爪の痕傷も浅いだろうけど
財布の中の氷河期は中国にも止められない
妻の顔を浮かべても
後悔の念はベクトルを返した
先手必勝がどうとか
甘いのがどうとか
高校時代の親友を怨みたい
いつかのための毎日に
なんの意味も無かったんだ
後退り無く引くこの愁いを
もう少しだけ大事に取っておきたかった
真っ暗画面の向こうに
2年前の自分が笑っている